原発事故関連教材紹介

2011年3月11日の福島第一原発の事故以来、われわれは否応なく放射線と向き合いながら生活していくことになりました。このページは、公益社団法人福島原発行動隊の活動の一環として、原発事故や放射線、放射性物質について説明した書籍、PDFなどの教材、資料を集めたものです。記述の難易度や内容について一定の評価を行いました。評価の記述は、あくまでそれぞれの執筆者個人によるものであり、目安にすぎませんが、教材などとして利用される際の参考として、ご活用ください。
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正しい知識で深く理解する! 低線量被ばくKEYBOOK



内容の程度専門的やや専門的一般向け中学生小学生
    
図版類の使用程度
(写真・イラスト・表)
図版主体図・文半々文章主体
  

内容項目  \  評価非常に詳しい詳しい一応の説明少しなし
原子力発電の事故
原子力発電のしくみ
原子力発電と社会・経済・環境
放射性廃棄物の処理
放射線と放射性物質
放射線の人体への影響
放射線の利用
放射線の測定方法
放射線から身を守る
除染について

【発行形態】市販書籍
【タイトル】正しい知識で深く理解する! 低線量被ばくKEYBOOK
【編者】中川恵一(東京大学医学部付属病院 放射線科准教授)
【発行所】メディカルアイ
【発行年月日】2012年11月30日
【価格】2667円+税(2800円)
【本文刷色、ページ数】単色 167ページ

内容説明
 本書は福島第一原発の事故によって生じた一般の人の被ばくを念頭に置いて,いわゆる低線量被ばくが健康に及ぼすことに関して国際的に採用されている現在の考え方の解説を中心においています.第1部の低線量被ばくの解説は一般向けですが,第2部の放射線リスクの解説はやや専門的です.
筆者がこの本を読んで得た結論(印象)を以下に述べます:
 放射線被ばくの健康に及ぼす影響は,広島・長崎の被爆者の長年の追跡調査(疫学研究)に基づいて判断されています.この調査によると,原爆による高線量の被ばくによりがんへの影響が認められますが100〜200mSv(ミリシーベルト)以下の被爆ではがんへの影響は他の因子の影響と区別できないと結論されています.
 その中で,放射線防護の観点から高い線量の結果をもっと低い線量のところまで延長できると考え,職業として放射線を被ばくする人の線量として,5年で100mSv,1年で20mSvという値が,一般の人(公衆)に対する値としては, 1年で1mSvが国際保線防護委員会(ICRP)から提案されました.ただし,これらの値は被ばく対策を計画的に実施できる(計画被ばく状況)ときに,職業人および公衆の被ばく量を管理するための基準値としてのものであって,がんになりやすくなる限界値と考えるべきものではありません.これに対し,現在の福島のように管理についての決定がなされる時点で既に存在している(現存被ばく状況)状況では公衆の被ばく防護のための基準値は,1〜20mSvの間で社会的経済的要因を考慮して決めるべきものとICRPは提案しています.種々の因子を考慮したうえで,総損害を小さくすることが重要であるとの考えに基づいています.
 被ばくの健康に及ぼす影響については,放射線との衝突によって原子や分子がどのように変化するかという物理学的事象から出発する研究もあります.分子の変化に対して細胞がどのように振る舞うか,細胞の変化に対して組織がどのように振る舞うか,組織の変化に対して個体としての生物がどのように振る舞うか,の間には多くの機構が介在します.その研究は進んでいますが,物理学的事象の観察から生物(ヒト)が受ける影響を定量的に結論することはできていません.被ばくした多数の個人に現れた事象を統計的(疫学的)に処理して放射線の影響を議論する疫学研究に頼らざるを得ません.ただし,がんをもたらす原因となる因子はいろいろあってそれらが互いに関連し合ってもいるので,放射線の影響を取り出すには限界があります.低線量被ばくでは,他の因子の影響と区別できない程度の放射線の影響を問題としていることになります.
 どの程度以下の被ばくならば被ばくの影響が他の因子の影響と区別できなくなるかについて結論を下すには,生物医学および疫学に関する深い知識と長い経験が必要とされます.本書では,100mSv以下では被ばくの影響は他の因子の影響と区別ができないなど,低線量放射線被ばくに関する問題に関してICRPや国連の原子放射線の影響に関する科学委員会(UNSCEAR)などで国際的に採用されている考え方を中心にポイントを絞って専門家が解説しています.筆者がここに紹介する所以です.
(伊藤邦夫)