福島原発事故対策担当大臣 細野豪志 殿

東京電力株式会社 原子力・立地本部 副本部長 石崎芳行 殿

福島第一安定化センター 総合計画部長 山下和彦殿

退役技能者・技術者等の福島原発事故収束作業への参加に関する提案

一般社団法人福島原発行動隊は「福島第一原発事故収束作業における若年者の被曝を、少しでも高齢者が肩代わりする」ことを目的として、次の諸点を提案します。なお、行動隊員はボランティアではありますが、労働災害保険の対象とすること(少なくとも最低賃金が支払われること)をふくめ、収束事業の実施主体が費用負担をする有償活動であることを前提とします。

2011 年8 月3 日

一般社団法人 福島原発行動隊

  • 1. 収束作業への「福島原発行動隊」の当面の参加
    当面、大きな体制の整備や変更を伴わずに実現可能な課題として、次の2つの作業に積極的に参加する意志のあることを表明する。なお、これらは国家プロジェクトとして遂行されることが望ましいが、スタート時点では必ずしも国家プロジェクトにはこだわらない。

    • 1) 原発内および周辺 20km 圏内(高濃度汚染地域も検討)の環境汚染モニタリングへの参加
      すでに「福島原発行動隊」としての検討を開始しているが、行動隊員には一定の研修によってモニタリング作業に携わることができる要員が相当数登録されている。
    • 2) 原発内および周辺 20km 圏内を含む高濃度汚染地域の瓦礫処理、除染作業への参加「福島原発行動隊」には、多くの大型特殊免許所持者がおり、またフィールドでの作業者も用意できる。さらには若干の重機をも含めて派遣する用意がある。

     

  • 2. 原子力施設での作業者の最適配備を可能とし、被曝後の健康管理をする仕組みの構築を要望する
    若年の作業者に代わって高齢の退役者を、最適な作業に配置するためには、次に示すような仕組みを構築することが必要であると考える。

    • 1) 全国の原子力発電所作業者全員を対象にした被曝管理体制が必要である
      現在の放射線管理の制度の下では関連する各組織がそれぞれ次の管理をしている。

      • A. 中央登録センター(財団法人放射線影響協会)
        放射線管理手帳受給者にかかわる被曝量のデータを保管している。しかし、被曝量の平準化などの、作業者の最適配置などは実施していない。
      • B. 各事業者(作業者の雇用主)
        作業者を雇用している期間のみ、許容被曝量を超えないよう作業を管理する義務を負っている。雇用が終了した後の管理責任はない。なお現在の福島第一だけではなく全国の原子力施設(およびほとんどの主要産業)では、次のような業務請負体系のもとで、それぞれのレベルの請負者が「雇用主」となって上記の責任を負っている。
        電力会社⇒元請け企業(東芝・日立・大成建設など)⇒元請け企業の子会社、あるいは専門メーカー(IHI など)⇒各種専門工事会社⇒現地請負工事会社(あるいは斡旋業者による紹介)
      • C. 各原子力施設(発電所、使用済み核燃料処理設備など)
        当該原子力施設内で作業している作業者の被曝量を測定し、規定被曝限界を超えることがないように管理している。またその情報を中央管理センターと各事業者に報告する。
        福島第一原発の事故収束にはロードマップに示す「中期的課題」からさらに廃炉までの長期にわたる作業が不可欠であることを考えると、福島第一を含む日本全国の原子力施設にかかわる作業者の被曝予測と供給計画を立案することが必要である。長期にわたる安全を期すためには、万が一シビアー・アクシデントがもう一件発生した場合をも考慮した作業要員確保を検討することが望まれる。
    • 2) 被曝量/年齢を考慮した作業者の最適配置が可能な仕組みが必要である退役者を有効に作業現場に投入するためには、複数の企業にまたがった業務に関わる作業者(望ましくはすべての作業者)の最適配置ができる仕組みを構築することが望まれる。
    • 3) 福島第一原発での被曝者の長期にわたる健康管理体制の構築が必要である現在の仕組みのもとでは大手企業を除き、雇用主が被曝した作業者との雇用契約を解除した以降の健康管理体制が整っているか疑問である。国家的な体制の整備が望まれる。

     

  • 3. 緊急仮設設備完成後の「中期的課題」取り組み体制の整備を提案する
    ロードマップのステップ1/ステップ2 に示された対策は、基本的には応急対策(仮設設備の設置)である。この応急対策についてはさまざまな問題が指摘されてはいるが、震災後極めて短期間に想像を絶する環境下でこれらの作業を達成したことに敬意を表する。
    しかしながら事故の収束にはステップ2 以降の「中期的課題」の達成、廃炉、さらに長期にわたる汚染廃棄物の管理保管が不可欠な課題である。これらは応急対策ではなく、長期にわたる安定的な設備の建設と運営が必要であり、これまでとは基本的に異なった姿勢と体制が必要と考えられる。さらに、上記2 項の被曝管理を実現することも、東電の社内組織では困難が予想されるであろう。これらの要求に対応するには次のような方策をとることも考えられる。
    たとえば:
    ☆ 事故収束実行チームを、東京電力社内組織である「福島第一安定化センター」に代わる、総合的な国家プロジェクトチームとする。
    事故収束の実務(実施計画、調達、発注、管理、実行)を行う実行チームは、現在は東京電力社内組織である。この実行チームを、東電、関連設備メーカーおよびゼネコン出身のメンバーを統合し、さらに現設備とは利害関係のない工程管理や品質管理などを専門とするプロジェクト・マネージャを配置した、総合的な国家プロジェクトチームに編成しなおす。

以上