NHKラジオ第1放送「私も一言!」に山田が出演します(文字おこし追加)

7月6日 18時からNHKラジオ第1放送にて放送されます「私も一言!」に、山田が出演します。
山田の出演は18時30分~18時45分頃です。
ぜひお聴きください。

以下、文字おこししたものです。(文字おこし:池崎中彦)

NHK  今日、私が注目したのは事故からまもなく四ヶ月になろうというのに収束作業が難航している東京電力福島第一原発のその後です。被曝線量が許容限度を超える作業員も続出している中で、放射線被爆の危険性のある現場で働こうと手を上げた方々がいます。人呼んで福島原発行動隊。今夜のゲストは、その行動隊の呼びかけ人である山田恭暉さんです。行動隊を立ち上げた動機や今後の活動について山田さんにお聞きします。山田さん、ネットで行動隊に皆さんもご一緒しませんかと呼びかけたのは、どんなお気持ちからなんでしょうか?

山田  地震と事故のすぐ後、もう原発がかなりひどいことになっているというのは、技術屋仲間で話していて、すぐわかったことことですけれども、そこで収束作業をやるには、かなり汚染された環境の中で大勢の人が働かなければならない。これは誰でもわかることです。そういう被爆に対して、若い人よりは年を取った人のほうが被害が少ないということも、ごく常識的に想像がつくことで、そうなったら我々、年を取った元技術者、元技能者が、むしろ優先的に仕事をするほうが、合理的な仕事の仕方じゃないかと考えて、仲間達に呼びかけをした、というのがきっかけです。

NHK  福島原発行動隊の趣旨を読ませてもらうと、原則として60歳以上、現場作業に耐えうる経験を有すること、つまり理科系の人、そういうことですよね?

山田  60歳以上としたのは、あまり厳密な意味ではなく、象徴的な意味をもたせています。日本では定年ということもあるし、良いだろうということで決めました。技術というと、私自身は大学出の技術屋ですから、いわゆるエンジニアですけれども、現場でもっと必要なのは、いわゆる職工さんと言われている技能を持った方々ですね。そのほうがむしろ大事かもしれない。エンジニアというよりは技能を持った方、ということも非常に重要なことだと思います。ただ現場の作業には技術的に難しいことだけではなくて、いろんな雑用がありますから、広く参加して頂いています。

NHK  60歳以上ということですけど、失礼ですけど山田さんご自身は?

山田  72歳です。

NHK  これまでに400人以上の皆さんから行動隊への参加表明を得られたということですが、これまでどういう仕事をされてきた方々が、応募されてきたのでしょうか?

山田  私共に登録して下さった方を全部集めると、たぶんどんな仕事でもできる。日本中の、ありとあらゆる職種がある、と言っても良いんじゃないでしょうか。

NHK  と言いますと、なにか物を作ったりとか?

山田  物を作る人もいますし、設計図を書く人もいますし、配管を繋ぐ人もいますし、とび職もいますし、クレーンの運転手さんもいますし、牽引トラックを運転する人もいますし、それこそ船を運転する人もいますし、無線技師もいますし、これならなんでもできるって言えるくらいです。

NHK  だけど、原発のことを知っているエンジニアじゃないと、あんまり役に立たないような…

山田  いえいえ、今作っている設備は、原発の本体はもう壊れているわけですから、水を回す設備を作っているわけですね。ですから原発の技術屋が今の水を回す設備を作るのに本当に役に立つのか、と言ったら、ほとんどか役に立たないかもしれない。

NHK  循環させる施設、注水、冷却施設を今、一生懸命回してますけれども。

山田  もっと言えば、これは別の技術かもしれない。

NHK  原発の技術とは別の? ということは、どういう作業を考えて、やろうとしていますか?

山田  作業の前に、現在の状況がどういう状況か、ということをちゃんと把握することが必要です。これにはもちろん、一定程度の原発の知識は必要でしょうが、それ以外にコンクリートの知識も要るでしょう、いろんな知識が要るわけですね。当然、水の知識も要る。さらに今回、汚れた水を綺麗にするということですから、これは原発そのものでは、ほとんど問題にならない仕事です。それをキチンと循環してやるということになると、汚水を処理する水処理技術屋が中心になる、というふうに考えても良いぐらいだと思います。そういう意味でプラントを全体として、まとめてキチッと計画し、キチッと建設する、というふうな仕事が中心になると考えなければいけないだろうと。

NHK  ほほう。それは今、東電はやっていないということになりますか?

山田  というか東電さん自身はプラントを運転するプロでいらっしゃいますから、運転にかけてはもちろん日本一、あるいはこの業界でトップということは間違いございませんが、プラントを作るということではけっして専門家ではない、というふうに考えてもおかしくないのではないでしょうか。

NHK  原子炉をどうするかという、そういう技術ではなくて、それ以外の所での技術屋さんと言いますか、そういうことがを求められていると…

山田  今、申し上げたのは、運転する技術と建設する技術は全く別のものだ、というふうにまず考えなければならない。しかも建設するときにも、個々の専門家がいるということと同時に、そのプラントを全体としてまとめあげることが必要です。最も効率的に、最もキチッと失敗なく作り上げる、そういうマネージをする技術がやはり必要になるんですね。そういう専門家がはたしてきちんと現場におられるのかどうか。私は寡聞にして、まだ情報を持っておりません。

NHK  そうすると山田さんが考えている、そういう作業を、行動隊としてしたい、もっと大きな、プロジェクト全体を見る仕事、ということが頭の中にあるのですか?

山田  まず一番最初に必要なのは、今回のような緊急の事態になって現場の作業をする方々が、非常に被爆が多くなってくるので、被爆の程度をキチッとコントロールするために全作業員を全体としてマネージする、ということをしないと、どこかに被爆が集中してしまったりする。作業員は1000人とか2000人とか言われてますけど、そういう方々を全体としてマネージすることが本質的にどうしても必要だろうと。ところが今の作業体制では、作業員はそれぞれ何重もの作業単位ごとに集まっていますから、そのコントロールはできない。作業員全体をコントロールするためには、今の仕事のやり方全体を組み替えていく、ということをしないといけない。もっと遡れば計画全体をトータルに見渡し、仕事の流し方を全体としてコントロールする所までやる、というのが理想的な姿だと。これがいっぺんにできるとはけっして思いませんから、そんなこと言ったって無駄だということに近いかもしれないけれど、そういう形に近づけるように、どこまでやれるか、ということが、作業する人達、我々の安全を守り、仕事をうまく進めるために必要なんだというふうに考えています。

NHK  そういう山田さんの考えは、東電とか政府に、すぐ通じたのですか?

山田  これはこれからの議論です。いま私共が申し上げているのは、私共は東電さんの下請けの一部になって仕事をするのではない。対等なパートナーとして、仕事をするのである。しかも、これは大規模な仕事だから、リクルートから始めて、終わった後の健康管理という所まで含めた、国家の、国家的なプロジェクト。国家とは言わずとも国家的プロジェクトである、という所まで持っていかないと、本来の仕事にならないだろうと。こういう提案はさせて頂いております。ただし、それを具体的にどうやってやるかということについては、今後の問題だし、それができなかったら我々はなにもしないよ、ということは言わない。ただし方向として、そちらに向かっていく。全体として、政府と東電さんと我々とが一緒になってやれるということが、私達が現場で仕事をさせて頂く基本条件だというふうに申し上げているつもりです。

NHK  それは最初から政府なり東電なりに向けられた考え方なのですか?

山田  5月26日に今の細野大臣と東電さんと私との三者の会談があったのですが、そのときに書面で、ご誓文じゃありませんが七箇条の条項を書いて、お渡ししてあります。細野先生にも預かって頂いている状態だと、私共は理解しております。

NHK  東電の立場とすると、途中から、そういう形で、すごい大規模なことを考えている方々が入ってきても、ちょっとなぁ…というふうに反発するのではないですか?

山田  すぐにできるとは思っておりませんし、それができるまでなにもしないよ、という話ではなくて、私は今、理想形を申し上げたけれど、この理想形に向かってどんな動きができるかというのは、これからご一緒に丁寧に考えていかなければいけない。仕事を壊してしまったら、何をしているのかわからない、ということになりますから、今の仕事を壊さずに、もっと良い仕事の仕方に変えることが、どこまで可能かということが、我々の、国としての課題だというふうに私は考えてます。

NHK  海外のメディア等からは、決死隊とか、あるいは特攻隊というような表現をされることがありますが、それはいかがですか?

山田  特攻隊と違う所は幾つもあると思いますが、大きく言うと二つがあって、第一は、無謀なことはしない。つまり成果のあることをキチンと最大の防御をしてやるということだと。第二は、志願したボランティアだから、決して命令はしない。やりたい人がやる、ということが我々の基本的なところです。特攻隊の場合も自発的に志願をしたようなことになっていますが、実はあれは組織の命令で動いている、というのが実態だったと思います。

NHK  これからの具体的な予定なんですが、第一陣が実際に現場に入ることが決まったそうですね?

山田  7月11日に東京を出て、7月12日に一日かけて現場の視察を5人のチームでするということで、今日、最終的なスケジュールの打ち合わせをしてきたところです。

NHK  第三者が、特にエンジニアの方が原発に入るというのは、事故後初めてなのですか?

山田  私の知る限りでは初めてですが、NHKさんはご存知ですか?

NHK  いやいや…多分、今まで誰も、そういう形では入ってないと思います。たぶんすごく長い戦いになると思うんですが、これから長期的に見て、どういうふうに事を運んでいこうと思ってますか?

山田  先程、もうすでにかなり大ボラを吹いてしまいましたけど、仕事の形を全体として最も理想的な形に汲み上げていくために、どれだけ我々が力になれるか、ということが一つの課題で、その中で、あるいはその結果として、若い人たちの被爆を少しでも防ぐ。我々ができることを最大限やる。年寄りがなんでもできるというのでは絶対にありません。力の要る仕事、例えば重たい物を持つ、ということは私にはできないし、熱中症に対しても弱いですから、若い方々と最大限のシェアを、最も合理的な仕事のシェアをして、少しでも若い方々の被爆を減らし、しかも仕事の仕方を理想形に近づけていく。それによって作業環境もなるべく良くしていくことに貢献できたら、大変うれしいことだと考えています。

NHK  私は文化系出身ですけど、やはり山田さんのお話を伺っていると、エンジニアリングというのは合理的に物事を進めて行こう、という感じですよね。

山田  いろんな考え方があると思いますが、エンジニアの真髄は合理的に仕事をすることだと考えております。